日本の働き方が大きく変わろうとしています。
厚生労働省では 1980年代以来となる大規模な労働基準法の改正 について最終調整が進んでおり、2025年の国会提出を目指して検討が本格化しています。
本改正は、
- フリーランス保護
- 長時間労働の規制強化
- 副業・兼業のルール見直し
- 管理監督者の定義明確化
- 勤務間インターバル制度の導入
など、現代の働き方に合わせた幅広い改正項目を含んでおり、企業の労務管理に大きな影響を与えます。
本記事では、議論が進む20項目の論点を、経営者目線でわかりやすく解説します。
1.労働者概念の見直し
●「偽装フリーランス」問題が背景に
近年増加する業務委託契約やフリーランス。
しかし実態としては
- 指揮命令下で働く
- 会社の机や設備を使用
- 勤務時間が管理されている
などの場合、契約形式にかかわらず「労働者」とみなされるべきではないかという議論が高まっています。
改正では、
- 使用従属関係
- 報酬の労務対価性
などの判断基準を明確化し、実態として雇用に該当する人を労働基準法の保護対象に含める方向が有力です。
→ 実態として会社に依存して働く委託スタッフは、今後“労働者扱い”になる可能性が高い。
2.家事使用人(家政婦)への労基法適用
長年、家事代行スタッフは労働基準法の適用外でした。
しかし現在は家事代行サービス企業が増えており、通常の労働契約と変わらない実態が多数。
そのため 適用除外を廃止し、家事使用人にも労基法を適用する方針 が強く検討されています。
3.労使協定(36協定)や就業規則の“企業単位化”
現行制度では、
- 事業場ごとに36協定を締結
- 事業場ごとに就業規則を作成
が原則ですが、企業全体で一括管理できる制度を拡大する方向で議論中です。
複数拠点を持つ企業にとっては、労務管理の効率化につながります。
4.労働者代表制度の見直し
労働者代表の選任方法(過半数代表)の不透明さが問題視されています。
改正では
- 選任ルールの明確化
- 任期制の導入
- 複数代表体制の検討
などが議論されています。
5.残業時間の上限規制の見直し(特別条項の廃止含む)
現在は
- 月45時間
- 年360時間
が原則。その上で「特別条項」を付ければ - 年720時間
- 月100時間未満
の残業が可能です。
しかし長時間労働の常態化を防ぐため、
特別条項を廃止し、すべての企業で月45時間・年360時間に統一する案 が検討されています。
これが実現すると、中小企業への影響は非常に大きくなります。
6.残業・休日労働状況の情報開示義務化
企業は今後、
- 長時間労働者の割合
- 部署・チームごとの平均残業時間
などを社内外に開示する方向が議論されています。
採用力・企業ブランドにも直結する重要な制度です。
7.週44時間制の廃止
現状、
- 小売店
- 旅館
- 飲食店
など、一部事業場は週44時間まで認められています。
これを 週40時間に統一 する方向が強い流れです。
ただし、地域密着型企業への影響を考え、段階的な移行になる見通しです。
8.テレワークと通常勤務のハイブリッド型制度整備
現行制度はフレックス制の適用が使いにくい部分があり、
- テレワーク日はフレックス
- 出社日は固定時間
という運用が難しい状況です。
これを解消するため、部分適用を認める方向で調整が進んでいます。
9.管理監督者の定義を明確化
現在「管理職=残業代ゼロ」が慣例的に扱われていますが、実際は裁判でも争われており定義が曖昧。
改正では、
- 権限
- 責任
- 労働時間の裁量性
をもとに「管理監督者かどうか」を明確化する方針です。
加えて、管理監督者にも 健康確保措置(面談・休日確保など)を義務付ける案 が出ています。
10.4週4休制度の見直し
現行の
「4週4休」=最大48連勤も可能
という制度は、現代の働き方に合わないという指摘が多数。
改正案では
- 2週2休
- 連続勤務は最大13日まで
など、より現実的な基準へ変更される可能性があります。
11.休憩の“一斉付与”義務を見直し
6時間超で45分、8時間超で1時間の休憩を「一斉に付与」という現行ルールは、
フレックスや裁量労働制に合わない部分があります。
改正では
休憩付与方法の柔軟化
が議論されています。
12.勤務間インターバル制度の導入(11時間案)
仕事終了から次の始業までの「休息時間」を確保する制度です。
議論では
11時間インターバル(欧州基準)
が最有力。
→ 例:24時退社 → 翌11時まで勤務不可
ただし緊急対応や業種ごとの事情を踏まえ、柔軟な運用が求められています。
13.「つながらない権利」の法制化
休日のメール・チャット・電話に対応しない権利です。
欧州で普及している制度を参考に、日本でも導入が検討されています。
今後は企業側にも
- 顧客との連絡ルール整備
- 社内ガイドラインの策定
が必要となるでしょう。
14~16.有給休暇制度の見直し
主に以下の点が議論されています。
● 有給5日間の時季指定義務の柔軟化
産休復帰直後や退職予定者にも一律で適用するのは現実的ではないという指摘。
● 時間単位有給の拡大
現状5日分のみだが、増やす案も。
●「8割出勤要件」の廃止案
諸外国にはない要件であり、見直し論が強まっています。
17.割増賃金率の見直し
深夜・時間外労働の割増率を引き上げる案があります。
ただし中小企業への負担増が大きく、慎重に議論されています。
18.副業時の労働時間通算ルールの見直し
現行では複数企業で働く場合、労働時間を合算し割増賃金を算定する必要があります。
しかし実務では
- 企業間での情報共有が困難
- 副業申告を避ける人が増加
という問題が発生。
そのため
副業の場合は通算しない・割増なしとする案
が検討されています。
19.裁量労働制の対象拡大
現状は専門業務型・企画業務型に限られますが、
- 適用業務の拡大
- 手続きの簡素化
が議論されています。
ただし長時間労働助長の懸念があり、労働組合側は強く反対しています。
20.農林水産業への労働時間規制導入
現在は労働時間規制の「適用除外」となっていますが、
健康面・過重労働防止のため、
最低限の労働時間管理を導入する方向
が議論されています。
中小企業が今から準備すべきこと
1.労働時間制度の見直し
残業上限の厳格化に備えて、業務フローの改善が必須。
2.人員計画の再検討
残業規制強化は人手不足企業に直撃します。
3.副業ルールの整備
通算ルールが変わると、副業の扱いも大きく変わります。
4.労務管理ツールの導入
情報開示義務や勤務間インターバルの導入に備え、
勤怠管理システムの導入が必須レベルになります。
まとめ:改正は「従業員の健康確保」と「持続的な働き方づくり」が目的
今回の労働基準法改正は、
単なる規制強化ではなく 「健康に働ける環境を整え、企業自身の持続性も高める」ための改革 といえます。
中小企業にとっては負担もありますが、
- 採用力の向上
- 離職率の低下
- 生産性向上
につながる可能性も高い改正です。
正式な法案が公表され次第、さらに詳細な内容をまとめますので、今のうちから情報をキャッチアップしておきましょう。






