はじめに
人手不足や長時間労働の是正が求められる中、企業には「生産性を高めながら働きやすい職場環境を整えること」が強く求められています。
こうした取り組みを後押しするのが、厚生労働省が実施する**「働き方改革推進支援助成金」**です。
この助成金は、設備投資や制度整備など「働き方改革」に資する取り組みを行う企業に対して、費用の一部を補助する制度です。
中小企業にとっては、生産性向上と労務環境の改善を同時に実現できる貴重な制度といえます。
この記事では、働き方改革推進支援助成金の仕組みや最新の変更点、申請のポイントについて詳しく解説します。
働き方改革推進支援助成金の概要
制度の目的
「働き方改革推進支援助成金」は、
企業が長時間労働の削減や年次有給休暇の取得促進など、働き方の改善に取り組むことを支援するために設けられた助成金です。
助成対象となるのは、「労働時間の短縮」「年次有給休暇の促進」「生産性向上のための設備導入」など、具体的な改善策を実施した事業主です。
対象となる事業主
主な対象は次の通りです。
- 中小企業事業主(資本金・従業員数が中小企業基本法の基準内であること)
- 労働基準法第36条に基づく「時間外・休日労働に関する協定(いわゆる36協定)」を締結していること
- 改善計画を作成し、都道府県労働局へ提出できること
助成対象となる取組例
- 労働時間を短縮するための機械・システム導入(勤怠管理システム、自動化設備など)
- 年次有給休暇の取得を促進する制度の新設
- 特別休暇制度や時間単位有給制度の導入
- 就業規則の見直し・改定
このように、**「労働時間削減」「年休促進」「職場環境改善」**に資する取り組み全般が助成の対象になります。
労働時間短縮・年休促進支援コースの特徴
現在、働き方改革推進支援助成金にはいくつかのコースがありますが、
最も多くの中小企業が利用しているのが**「労働時間短縮・年休促進支援コース」**です。
対象となる主な取組内容
このコースでは、以下のような「3つの取組」のうち、いずれか1つ以上を実施することが条件です。
- 時間外労働の上限引き下げ
36協定で定めた月80時間超の残業を60時間以下に見直す。 - 年次有給休暇の計画的付与制度の導入
企業が年休の取得時期を計画的に設定し、取得率を高める仕組みを導入。 - 時間単位年休制度や特別休暇制度の導入
1時間単位で年休を取れる制度、または家族看護・ボランティア等の特別休暇制度を導入。
いずれの取組も、就業規則の改定と労使協定の整備が必須です。
助成率と上限額
設備投資やシステム導入などに要する費用の最大3/4が助成対象となり、
助成額の上限は150万円(取り組み内容によって異なる)です。
たとえば勤怠管理システムや業務効率化ソフトの導入、残業時間の削減につながる自動化設備なども対象になります。
賃金引上げによる加算制度
2025年度(令和7〜8年度)予算案では、賃上げを行う企業に対して加算制度が拡充される見込みです。
賃上げ率ごとの加算金額(予定)
| 賃上げ率 | 加算金額(中小企業) |
|---|---|
| 3%以上 | 6万円〜最大60万円 |
| 5%以上 | 24万円〜最大480万円(従来の2倍) |
| 7%以上 | 36万円〜最大720万円(従来の2倍) |
特に5%・7%以上の賃上げを行う企業では、前年に比べ上限額が倍増する見込みです。
これは、政府が進める「賃上げ促進税制」との整合性を意識した政策であり、
中小企業にも積極的な給与改善を促す狙いがあります。
注意点
現時点では、「従業員30人超の企業」も対象となるかは未定です。
今後の省令改正で「常時雇用30人以下の事業者限定」となる可能性もあるため、
該当企業は早期の申請(現行制度内)を検討するのが安全です。
新設予定:取引環境改善コース(運送業向け)
2025年度から新たに創設予定なのが、「取引環境改善コース」です。
これは主に運送業を対象とした助成金で、長時間労働の是正と取引慣行の改善を目的としています。
主な特徴
- 荷待ち時間や長時間拘束の削減に資する取り組みが対象
- 取り組みに必要な設備投資(システム・機器導入)費用の助成
- 上限額は100万円程度を想定
物流業界では「2024年問題」に伴うドライバーの時間外労働上限規制が迫っており、
このコースはその対応策として注目されています。
申請から助成金受給までの流れ
- 取組計画の作成
改善内容・実施スケジュール・費用見込みを整理。 - 事前申請(交付申請)
取り組み開始前に都道府県労働局へ申請。
※実施後の申請は原則不可。 - 取組の実施
計画に沿って設備導入・制度改定などを行う。 - 成果報告・実績申請
取り組み完了後、実施結果と費用を報告。 - 審査・支給決定
内容確認の上、助成金が交付される。
申請から支給までにはおおむね6か月程度かかるため、
年度内(3月末)までに実施を完了させたい場合は早めの着手が必要です。
よくある質問と注意点
就業規則の改定は必須ですか?
はい。対象となる取組の多くが制度導入を伴うため、就業規則の改定が必要です。
社労士など専門家のサポートを受けることでスムーズに対応できます。
設備投資の内容に制限はありますか?
「業務効率化」「労働時間削減」「年休促進」に明確な効果がある設備が対象です。
たとえば、勤怠システム、在宅勤務用機器、予約管理ツール、製造ライン自動化装置などが該当します。
他の助成金と併用できますか?
同一の経費で複数の助成金を受給することはできませんが、
異なる取組内容であれば他制度(例:業務改善助成金、両立支援助成金など)との併用も可能です。
まとめ|「助成金を使った働き方改革」で企業の競争力を高める
「働き方改革推進支援助成金」は、単なる補助制度ではなく、
企業の生産性と人材定着力を高めるための経営支援ツールです。
- 設備投資費用の3/4が助成対象
- 最大助成額150万円+賃上げ加算720万円
- 制度改定・年休促進・労働時間削減など幅広く活用可能
また、複数年にわたって申請できるため、
「今年1つ導入→翌年さらに追加取組」といった段階的な活用も可能です。
人手不足の時代において、「働きやすさ」は採用力・定着率を左右する経営要素の一つです。
この助成金を上手に活用し、自社の働き方改革を推進していきましょう。







