大企業と中小企業の力関係が大きく変化しつつある現在、取引現場において下請法(下請代金支払遅延等防止法)が以前にも増して注目されるようになりました。
原価高騰や円安の影響で仕入れ値が上がり、多くの中小企業が価格転嫁を求める一方、発注側(親事業者)もコスト圧力に苦しんでいます。
その結果、知らないうちに「下請法違反」をしてしまうケースが急増しています。
特にインフレ時代は値上げ交渉が活発化しているため、親事業者・下請事業者の双方にリスクが存在します。
本記事では、中小企業の経営者が必ず押さえておくべき下請法の基本、禁止行為11項目、罰則、実務上の対応ポイントをわかりやすく解説します。
下請法とは?目的と法的な位置づけ
下請法の正式名称
下請代金支払遅延等防止法(1956年制定)
下請法の目的
に記載のとおり、下請法は下請事業者の利益を保護し、取引の公正を確保するための法律です。
特に以下の点が重要です。
- 大企業と中小企業の力の不均衡を是正する
- 納品拒否、代金減額、支払遅延などの不当行為から下請を守る
- 産業の健全な成長を支える
近年はインフレ・円安・原材料価格上昇が重なり、下請企業の価格交渉力が低いままコストだけが増加する状況が続いており、政府も監視を強化しています。
下請取引とは?どんな場合に下請法が適用されるのか
下請法はすべての取引に適用されるわけではありません。
にあるように、対象となる取引は「資本金規模」と「取引内容」で明確に定義されています。
主な適用区分(例)
- 親事業者:資本金5億円以上
- 下請事業者:資本金1億円以下
- 取引内容:製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託など
つまり、大企業が中小企業へ制作・開発・加工などを依頼する典型的なBtoB取引が広く対象になります。
下請法違反の禁止行為11項目(全て違法)
下請法第4条では、親事業者が行ってはならない禁止行為が明確に定められています。
ファイル内にも一覧があります。
以下では、実務で特にトラブルの多い11項目を簡潔に解説します。
1. 受領拒否(第1項第1号)
納品物に問題がないのに受け取りを拒否する行為。
例:
- 納期通りに納品されたのに「今日は忙しいから受け取れない」
- 品質に問題がないのに「検品できない」を理由に拒否
2. 代金の支払遅延(第1項第2号)
受領後60日以内に支払わないことは違法。
「経理処理の都合」「月末締めの翌々月払い」などは理由になりません。
3. 下請代金の減額(第1項第3号)
一方的に代金を値引きする行為。
「昨今の不況だから」などの理由で値引きを迫ると違法です。
4. 不当返品(第1項第4号)
下請に責任がないのに返品する行為。
材料の高騰を理由に返品することも不当とされます。
5. 買いたたき(第1項第5号)
市場価格を無視して、著しく低い価格で発注する行為。
6. 購入・利用強制(第1項第6号)
指定の資材・サービス・ソフトウェアなどの購入を強制すること。
7. 報復措置(第1項第7号)
値上げ交渉をした下請に対して、発注量を減らすなどの報復行為を行うこと。
8. 有償支給原材料の早期決済(第2項第1号)
原材料の対価の支払時期を不当に早めること。
9. 割引困難な手形交付(第2項第2号)
極端に長期の手形を渡すなど、資金繰りを悪化させる行為。
10. 不当な経済上の利益供与(第2項第3号)
例:
- 親会社の商品を購入させる
- 親会社指定の金融機関の利用を強制
- ゴルフ大会の協賛金を支払わせる
11. 不当な給付内容変更・やり直し(第2項第4号)
仕様変更による追加作業を無償で要求する行為。
例:
- 設計変更による作業増
- 顧客クレームに伴う追加工
- 納品後の不具合修正
下請法違反の罰則・リスク
下請法違反には以下のリスクがあります。
1. 50万円以下の罰金(刑事罰)
2. 公正取引委員会による勧告・指導
3. 企業名の公表(重大な reputational risk)
4. 民事的な損害賠償責任
インフレ時代に増えている“見えにくい違反”
以下はインフレ局面で実際に相談が急増している例です。
- 原価高騰分の価格転嫁を認めない
- 「今期は厳しい」の一言で値下げを要求
- 人件費が上がっても単価の見直しに応じない
- 「発注量を増やすから協賛金を出して」と要求
これらは状況によっては、買いたたきや不当な利益供与など複数の禁止行為に該当します。
中小企業が取るべき実務対応
1. 交渉内容を必ず文書に残す
「口頭での合意」は後の争いで不利になります。
2. 契約書や注文書を必ず交換する
実務ではメール形式でも有効です。
取引基本契約を結ぶことでトラブルを減らせます。
3. 不当行為を受けた場合はすぐ相談
中小企業庁の「下請かけこみ寺」が無料で対応しています。
4. 価格転嫁のエビデンスを整理
- 原材料の値上げ通知
- 単価表
- 仕入れ先からの請求書
まとめ:下請法は中小企業を守る大切な武器
本記事をまとめると──
- 下請法は中小企業を守る重要な法律
- 親事業者には守るべき禁止行為が11項目ある
- 違反すると罰金・企業名公表・損害賠償など重いペナルティ
- 価格転嫁交渉が増える今こそ正しい理解が必要
下請法の理解は、中小企業が適正な利益を確保し、持続的に成長するための“武器”です。
取引の透明性を高め、公正なビジネス関係を築くためにも、今こそしっかり学び、実務に活かしましょう。







