はじめに
「今期の利益が予想より多く出そうだ」「このままだと法人税が増えてしまう」——
決算前の経営者の頭を悩ませるのが、税金対策です。
節税対策は単なる“経費の前倒し”ではなく、会社のキャッシュフローを守り、翌期の経営を安定させるための経営戦略の一部です。
しかし、無計画に支出を増やしてしまうと、資金繰りを悪化させるリスクもあります。
そこで今回は、決算前に中小企業が実行できる具体的な節税方法を15項目に整理し、
「効果」と「注意点」をセットでわかりやすく解説します。
節税対策に取り組む前に知っておくべき考え方
節税対策の目的は、**「税金を減らすこと」ではなく「会社の利益を守ること」**です。
無駄な支出で一時的に利益を減らしても、翌期に資金が不足すれば本末転倒です。
重要なのは、
- 今期の利益見通しを正確に把握すること
- 将来の投資計画とのバランスを取ること
- 実際に事業に必要な支出であること
この3点を意識しながら、必要なタイミングで“意味のある経費化”を行うことが、賢い節税の基本です。
決算前にできる節税対策
① 不要な固定資産・在庫の処分
使っていないパソコンや古い機械・什器などの固定資産は、除却損や売却損として経費計上できます。
帳簿上は資産でも、実際には使われていない資産を抱えていると、償却資産税の負担だけが残ります。
特に、償却資産の課税標準額が150万円未満の場合は非課税になるため、
不要な資産を処分して150万円未満に抑えることも有効です。
また、在庫も同様に、陳腐化した商品を処分して棚卸資産を減らすことで節税効果が期待できます。
処分の際は、除却証拠の写真や一覧を残すことを忘れずに。
② 未使用の固定資産の除却
購入したまま使用していない資産(ロッカー、机、古いパソコンなど)がある場合、
これらも除却して経費計上が可能です。
使用していない資産は償却が進まず、帳簿価額が残ったまま。
除却によって「除却損」を計上することで、節税とオフィス整理を同時に実現できます。
③ 30万円未満の資産・消耗品を購入
10万円未満の備品は全額経費に、
10万円以上20万円未満は一括償却資産として3年償却、
さらに30万円未満であれば「中小企業等の少額減価償却資産の特例」で一括経費処理が可能です。
ただし、特例を使えるのは年間合計300万円まで。
同じ年度内で購入が多い場合は超過に注意しましょう。
④ 中小企業者等の少額減価償却資産の特例を活用
青色申告をしている中小企業は、30万円未満の資産を購入した際、
取得価格全額をその年の経費に計上できます。
適用要件
- 資本金1億円以下(または従業員500人以下)
- 青色申告をしている
- 年間合計300万円まで
通常、耐用年数に応じて数年にわたって費用化するところを、
この特例により即時経費化=税負担を翌期に繰り延べできます。
⑤ 中古資産の購入で早期償却を活用
中古資産は、耐用年数が短く設定できるため、
新品よりも早く減価償却できる=短期間で経費化できるというメリットがあります。
たとえば、中古車や中古機械は、使用年数に応じて耐用年数が短縮され、
節税効果を早期に得られる場合があります。
中古の設備投資は、コストを抑えつつ節税も実現できる賢い手段です。
⑥ 接待交際費の特例を活用
資本金1億円以下の中小企業は、年間800万円までの交際費を損金算入できます。
また、1人あたり1万円以下の飲食費は交際費ではなく「会議費」として全額経費化が可能です。
さらに、全社員を対象とした新年会や忘年会の費用は「福利厚生費」として処理でき、
従業員のモチベーション向上と節税を両立できます。
⑦ 決算日の変更を検討
決算日を変更することで、利益計上時期を調整し節税効果を得ることも可能です。
たとえば、3月決算の法人が利益を繰り延べたい場合、決算日を2月に変更することで1か月分の利益を次期にずらすことができます。
また、繁忙期を避けて決算日を設定することで、決算業務の負担を軽減するメリットもあります。
⑧ 未払費用の計上
当期に発生しているが未払いの費用は、未払費用として経費計上できます。
代表的な例として、
- 給与・賞与
- 社会保険料
- 家賃・水道光熱費・通信費
などがあります。
支払が翌期であっても、発生主義に基づき今期の経費にできるため、
節税と経理の正確性を両立できます。
⑨ 社会保険料・労働保険料の未払計上
社会保険料の会社負担分は、債務が確定した時点で経費計上が可能です。
たとえば、3月分の社会保険料を4月に支払う場合でも、3月末時点で債務が確定していれば、
今期の経費として計上できます。
労働保険料も同様で、決算期に未払い分を計上して損金算入することが可能です。
⑩ 前払費用の計上(短期前払費用の特例)
支払日から1年以内にサービス提供を受ける前払費用は、「短期前払費用の特例」を使うことで支払時に全額経費にできます。
たとえば、決算月に翌年分の家賃や保険料を1年分まとめて支払えば、その全額を当期の経費として計上できます。
ただし、翌期以降も継続して支払い・契約を続けることが条件です。
⑪ 旅費日当の支給(旅費規程の整備)
出張旅費規程を整備することで、出張手当を全額経費処理できます。
旅費日当は課税されない非課税手当であり、会社の経費として損金算入可能です。
ただし、出張記録や領収書など出張の事実を証明する資料の保存が必須です。
全社員を対象とする公平な規程を整えることが信頼性のポイントです。
⑫ 役員退職金の支給・未払計上
役員退職金は中小企業の節税対策として非常に効果的です。
退職金は退職所得控除が適用され、分離課税となるため、他の所得よりも低い税率で済みます。
さらに、退職金は会社の損金に算入可能であり、
株主総会の決議を経て未払計上することでも損金処理できます。
将来的な事業承継や経営交代のタイミングでの活用も有効です。
⑬ 税額控除制度の活用
国は中小企業向けに各種の税額控除制度を設けています。
代表的なものは以下の通りです。
- 中小企業投資促進税制
- 所得拡大促進税制(賃上げ促進税制)
- IT導入補助・経営力向上計画の税制優遇
これらは要件を満たしていても自動適用されないため、別表への記載や届出書の提出が必要です。
決算前に該当する制度がないか確認しておくことが重要です。
⑭ 中小企業退職金共済(中退共)への加入
中小企業退職金共済は、従業員の退職金を外部に積み立てる制度です。
掛金は全額損金算入でき、節税しながら従業員の福利厚生を充実させることができます。
なお、対象は従業員のみで役員は加入できません。
加入手続きは簡単で、掛金は月額5,000円〜30,000円まで自由に設定できます。
⑮ 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の活用
経営セーフティ共済は、取引先が倒産した場合に備える国の制度です。
掛金は全額損金算入(法人)または必要経費(個人)が認められ、
40か月以上積み立てると解約時に掛金100%が戻る仕組みです。
掛金限度は月20万円・累計800万円まで。
実質的に「節税しながら社外に資金を積み立てる」有効な方法です。
まとめ
決算前の節税対策は、「とりあえず経費を使う」ことではなく、
将来を見据えた資金計画と税負担の最適化を目的に行うことが重要です。
固定資産の整理や制度利用など、タイミングを逃すと次期以降に持ち越せない項目も多いため、
決算1〜2か月前から税理士と相談し、早めにシミュレーションを行いましょう。
節税は、「税を減らす」よりも「お金を残す」発想で考えるのが成功の鍵です。
本記事を参考に、自社の現状に合った最適な対策を実行し、次期の経営をより安定させていきましょう。







